*new year snow*

=前編=
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昔々、とある勇者が魔王をやっつけてしまい、
魔力の半分と指導者を失ってしまった魔族達は 人間の住む大陸よりも
ずっとずっと東の海の真中にある小さな島に追いやられました。

最初のうちお互い争いあい、はるか遠くの人間達を憎み暮らしていましたが、 時が流れるにしたがい人間への憎しみは忘れられ、仲良く平和に暮らす様になったのです。

しかし、指導者である魔王の変わりになる者がいなかったので、
全員がひと月づつ順番に「1番魔王」をする事になったのです。

そしてこれは国民全員が魔王である「魔王の国」の物語。


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クリスマスのある日、8歳になるマリィは不満げに窓の外を眺めていました。

「あ〜ぁ、クリスマスなのに雪が降らないなんて最低!」

そう呟くと隣の家のドグの部屋を睨み付けました。
ドグはちょうどマリィと同じ年の、でぶっちょな男の子でした。
そのドグが、マリィにとっては最悪のタイミングであるこの12月に
「1番魔王」になってしまったのです。

「あのくいしんぼうのでぶっちょが「妖精食べ放題」なんておふれを出すから雪の妖精がみんな食べられちゃったのよ、きっと!!せっかくのクリスマスなのに。」

雪の妖精は冬にだけ雪を降らせる為に出てくる妖精でした。
口の中に入れると甘くて雪のようにとろける子供に人気の「おやつ」でした。しかし、妖精だってそう易々とは捕まってくれません。 ですから、食べたいと思ってもそう簡単に食べられるものではないのです。

雪の妖精が大好物のドグには、ある計算があったのです。
『「妖精食べ放題」というおふれを出せば、
特に食べたいと思っていない者でもついつい食べたくなる、
んでもってきっとそれに目をつけた商店の人たちは
雪の妖精で一儲けしてやろうと店頭にならべるだろう・・・・』

そうすれば自分は苦労せずして雪の妖精を食べられるだろうと。

ドグの悪知恵は成功しました。おふれを出してから10日も経たないうちに、商店の前には 篭に閉じ込められた雪の妖精達が沢山、並べられたのです。

そんな訳で、雪の妖精達も捕まる事を恐れてか雪を降らしに街へはやってきませんでした。

「がー!!あの憎ったらしいバカでぶっちょめ〜!!」

マリィは悔しくて、窓をガンガン叩きました。

「あらあら、マリィ。何をそんなに暴れているのよ。」

キッチンでクリスマスの御馳走を作っていたママがびっくりして飛んできました。

「だって〜!雪が降らないんですものぉ!」

ママはにっこり微笑んでマリィの横に座り、優しくなだめるようにマリィの頭をなでました。

「まぁ、マリィ。あなたはあさってから次の「1番魔王」になるんだから、
雪の妖精捕りを禁止して、そうしたら雪だって降らせてくれるでしょうよ。」

「いやよ〜!!クリスマスに雪がいいの!クリスマスは特別なのよ!」

「あら、マリィ。1月にだって、「new year」って言う
特別の日があるじゃない。」

だだをこねるマリィに動せずママは、相変わらずのにっこりで返します。

「new yearの雪」と言う響きに、ちょっと心が揺れはじめたマリィでしたが、 1ヶ月もの間追い掛け回された雪の妖精達がそう簡単に雪を降らせに来てくれるとは思えませんでしたし、このまま、ママに言い負かされるのはシャクだったので、なおも言い返しました。

「でもママ。おふれが無くなったからって雪の妖精達が街に来てくれるとは限らないじゃない。」

「確かにそうね。妖精達は「魔王」だの「おふれ」だの関係ないからね。
だからそれは「1番魔王」になるあなたのがんばり次第じゃないかしら?」

(って、私がどう頑張ればいいのよ!)

そう思いましたが、口ではママにこれ以上対抗出来ないと悟った時、玄関のチャイムがなりました。

「あら。パパとお兄ちゃんが帰ってきたわよ。おかえりなさい、パパ。」

ママとの会話で不機嫌だったマリィですが、なんせまだ8歳です。
パパがどんなプレゼントを持って帰ってきてくれるかと、あっと言う間に御機嫌になり玄関へと走りました。

「パパ、お兄ちゃん、おかえりなさい!ねぇねぇ、プレゼントはなになに?」

「ふっふっふ〜、素敵なプレゼントだぞ〜。」

そう、言いながらパパはもったいぶって後ろに隠して見せてくれません。

「もぅ〜!!パパの意地悪〜!!早く見せ・・・!!!!!」

パパの手を掴んみ背後へ回りこんだマリィの目に飛び込んできたものは・・・小さな篭の中で震えている雪の妖精でした。

先ほどまでのでぶっちょ魔王への怒りと、ママに言い負かされた怒りが、
合体し化学反応を起こし、マリィの怒りは頂点となってパパに向かって大爆発しました。

「パパなんて、大大大大大大大っ嫌いよぉぉぉぉ〜〜〜!!!!」

そう叫ぶと、妖精の入った篭を手に2階の自分の部屋へ上がってしまいました。

お兄ちゃんは吃驚して口を空けたまま何も言いませんでした。
何がなんだかよく分からないまま、

「うわ〜い!パパありがとう。大好き。」

と、言ってくれるはずであった娘に怒鳴られてしまった可哀想なパパは目を潤ませていました。

「な、なんだ?も、もう、し、思春期なのか?」

弱々しく言葉を放つパパの頭を優しく撫でながらママは言いました。

「パパ・・・・気まずい。」

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