silent Christmas


昔々、この世に人間と魔族が一緒に住みお城やお姫さまが存在していた頃のお話です。

ある一つの国にとても美しいお姫さまがいました。その名をアルゴ姫。
雪の降るクリスマスの夜に産まれたアルゴ姫は世界で一番美しかったのですが
世界で一番、傲慢でわがままでもありました。

そのアルゴ姫が15の年、魔王の遣いがアルゴ姫のお城へやってきました。
伝言の内容は、魔王が姫が20の年になったら姫をを后として迎えたいと言うものでした。

魔王と言えば、この世の醜いものの象徴そのものでした。。
姫はあんな醜い魔王と結婚なんてしたくないと、その遣いに断わりの手紙を渡しました。

アルゴ姫が16の年のクリスマス。プレゼントに何が欲しいと王様に聞かれたアルゴ姫は
今までの中で一番のわがままをいいました。

「あたしは永遠に今のまま若く、美しくいたいわ。」
そこで、親ばかな王様とお后様は世界中の魔法使いにおふれを出していました。
世界中から自称魔法使いと言う人間が山程やってきました。

訳の分からない呪文を唱えるもの、見た事もない舞いを踊りながら魔法をかけるもの・・・・
たくさんの魔法使いが来ましたが、アルゴ姫はちっとも納得がいきませんでした。

そりゃそうです。歳は1年に1歳しかとらないものです。
魔法にかかった実感などあるはずもありません。
その後も、何人も何人もの魔法使いが姫の元を訪れました。

1年がたち、2年がたち・・・・・姫の元を訪れた魔法使いはすでに二千人を超していました。
それでもアルゴ姫の満足のいくような魔法使いは訪れませんでした。

そして・・・・
3年目のクリスマスの夜に、とても素敵な「自称・大魔法使い」が来ました。
見るからに彼の魔法は効きそうです。嬉々としてアルゴ姫は彼の前にたちました。

彼は差し出した手の前に大きな魔法陣を描きながらアルゴ姫に魔法をかけました。

「これで、あなたは「永遠に」美しく、若いお姫さまでいられます。」

そう言って、口の片側を無気味に上げて微笑みながら去っていきました。

アルゴ姫は彼の魔法に満足しました。心なしか最初にその願いを言った16の頃の体に
少しばかり若返った気すらしたからです。

「あぁ、これで本当に魔法にかかった気がするわ。」

そして、それから・・・・・

1年がたったある日。
4年前に、姫を后に迎えたいと言っていた魔王の兵達が突然、アルゴ姫の国に攻撃を始めました。
アルゴ姫の断わりの手紙を遣いが持って帰った後4年もこれといって何の遣いも来なかった為、
すっかり忘れていた魔王からの攻撃に王様達もびっくりしました。

魔王軍はとても強い力を持っていました。
アルゴ姫の国は、兵隊が一軍また一軍と・・・減っていきます。
街の人もどんどん減っていきます。

そして気がつくと、その国はたった何ヶ月かの間に姫以外の人間は誰一人いなくなってしまいました。
王も后も誰も・・・・

それでも、姫は自分が若く、美しく、永遠に生きられる事に満足でした。
鏡で若い自分を見ていられたらそれでいいと思っていたのです。

周りの人間が次々と命を落としていっても、さらにその周辺の国が次々と滅んでいっても
さして気には止めませんでした。

そして、全ての人間がこの世からいなくなったある日の事。

アルゴ姫は少しばかり淋しくなりました。美しさをほめてくれる人も、羨んでくれる人も、
永遠を感じさせてくれるはずの時すらもこの世からなくなり、
時が自分を置いていってしまったように感じたのです。

「本当に、誰もいなくなってしまったのかしら?」

そうした不安で心細くなっていたアルゴ姫の前に突然、
あの魔法をかけてくれた素敵な大魔法使いが現れました。
アルゴ姫は突然現れた大魔法使いに、何の疑問も持たず喜んで駆け寄りました。

「あぁ、あなたは生きていらっしゃったのね!
私に、若さと美しさと永遠の命を与えてくれたあなた、あなたは私と供に生き、
私をを尊んであがめて一緒に生きてはくれませぬか??」

そうアルゴ姫が言った時、大魔法使いは薄ら笑いを浮かべました。

「えぇ、私はあなたの若さと美しさと、永久の命を尊び、あがめて生きていきましょう。
 この・・・・・魔王で良ければね。」

にやっと笑った大魔法使いは見る見るうちに、醜い魔王の顔に変わりました。
大魔法使いは変身していた魔王だったのです。
アルゴ姫は真っ青になり、狂ったように叫びだしました。

「誰かぁ〜!誰か助けて!誰か!!」

もちろん誰も出てはきません。生きている人間はアルゴ姫ただ独りなのですから。
絶望と恐怖に狂ったアルゴ姫はナイフで自分の胸を刺そうとしました。
しかし、一向にナイフの先はアルゴ姫の胸には刺さりません。

必死になってナイフを突き刺そうとするアルゴ姫に魔王はゆっくりと歩み寄り、
優しく抱きしめました。

「永遠の命と美しさを与えたのは、最強の魔力を持ったこの魔王ですぞ。
どんなナイフも傷一つ、そなたにつける事などさせはしない。」

恐れおののき、恐怖に顔をゆがめた姫に、その恐ろしく醜い魔王はくちづけをしました。

「そなたはこの魔王の「若くて、美しく、永遠の命」をもった后として生き続けるのだ。
 ・・・・そう、永遠に。」


それは、アルゴ姫が20の年。


それはそれは静かなクリスマスの夜の事でした。



†the end†





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